「Rのつく月には気をつけよう」感想

石持浅海さんの「Rのつく月には気をつけよう」を読みました。

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長江、熊井、夏美は大学時代からの飲み仲間。ここ数年は誰かがゲストを連れてきて、一緒に飲むのが恒例になっている。

趣味や思い出、意外な一面。盛り上がる話題は色々あるけれど、一番はやっぱり……。

収録作

  • Rのつく月には気をつけよう
  • 夢のかけら 麺のかけら
  • 火傷をしないように
  • のんびりと時間をかけて
  • 身体によくてもほどほどに
  • 悪魔のキス
  • 煙は美人の方へ

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酒と肴と日常の謎連作短編集。短編1作につき料理1品、お酒1銘柄、ゲスト1人というシンプルな構成です。

石持さんというと突飛な前提や限定された状況があり、その中で「どうする?」という話が多いですが本作は全くもって普通の風景。

ごく普通のマンションで身近な食材を肴に飲み会。料理とお酒でゲストの口を滑らかにし、あれこれ話しながらくつろぐ。全てが気持ちよく解決するわけではないところも良い塩梅でした。

特に好きなのは「のんびりと時間をかけて」「煙は美人の方へ」。

仕事終わりにちょっとひと息。気安い雰囲気と食べ物描写が魅力の1冊でした。

ネタバレを含む感想は追記にて。

熊さんのアレにはすっかり騙されました。

石持作品の地の文は大体あっちが名字、こっちが名前と刷り込まれていたのでコロッと。この信頼できない語り手が!笑

気づいたのは夏美が健太と旅行に行ったと知って熊さんが茶化したシーン。「熊さんにだけは言われたくないけど」の返しが引っ掛かりました。

何か見落としたか?と戻ってみれば、2人のアメリカ旅行が違う景色を持って繋がってくる、と。はースッキリ!

一方、スッキリといかないのが「悪魔のキス」の謎解き。長江説だと件の女性が帰ったあと、玄関の鍵が開いたままになってしまうんじゃないかと。

また、わざわざ家までついていかなくともグラスの縁やペットボトルの飲み口に仕込めば目的を果たせそう。となると、取り違え等によるただの事故の可能性が潰しきれない。揚子江しっかりしてくれー。

話が飛びますが、石持作品の「いい大人が相手をあだ名で呼ぶ」場面が好きです。

座間味くんもそうですし「宙の鳥籠」のしーちゃんも。理詰めと緊張の対極にあるワードが生む妙な安心感と、それがまかり通っている様にニヤニヤします。

引っ越しの荷物を片付けたら初読、再読問わず読みたい本が山積みに。石持祭もまだまだ続きそうです。

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