人を明日へ連れていく「迷犬マジック」感想
山本甲士さんの連作短編集「迷犬マジック」を読みました。
家族から認知症を疑われる男性
なかなかチャンスをつかめない、ストリート三味線奏者
マイナス思考のメタボ男性
人から逃げるように一人暮らしを始めた女性
人付き合い、環境、自分そのもの。つまずく主人公の前に現れた1匹の迷い犬、マジック。
戸惑いながらもマジックと暮らすうち、その生活に少しずつ変化が……?という物語。面白かったー。
特に好きなのがストリート三味線奏者・屋形の話。
うまくいく、にも種類がある。本当にそっちでいいのか?無言で問うマジックの表情が見えるようで、お気に入りのシーンです。
他人(犬含む)の視線や行動に、何を見出だすかは自分次第。
そんなことを思う1冊でした。
ネタバレを含む感想は追記より。
本作のテーマのひとつ「繋がり」。
少しずつリンクする物語もそうですが、マジックに貰ったものを貰いっぱなしにするのではなく、次に繋いでいくところが特に好きです。
七山のエピローグが屋形のプロローグになり、屋形の一言が岩屋のターニングポイントになる。岩屋や苺が蒔いた種は、それぞれの中で育っていく。
だから、マジックがいなくても大丈夫。
……。
でもさ、もっとマジックの活躍を読んでいたかったよ。
シリーズ化、しないかなあ。
(8月9日追記)
なんて書いていたら「迷犬マジック(2)」2022年9月8日発売だそうです。やったあ!

イヌ的な作家5名による短編集「Wonderful Story」感想
\Thanks for reading!/


