虎と月/山月記・李陵ほか

最近、出先でも本を読むようになりました。

通っている歯医者の待ち時間が長くて長くて。備え付けの雑誌も読みきってしまったので持ち込むことにしました。診療予約とはいったい。

そんなわけで、最近読んだ本の話。1冊目は柳広司さんの「虎と月」。

虎と月の書影

中島敦の「山月記」を材にとったパスティーシュ。李徴の息子を主人公とし、父が虎になった理由を求めて旅をするというミステリ仕立てになっています。

原典の知識は「教科書に人が虎になった中国の話が載ってたなー」というレベルで充分。むしろ中島敦に入れ込んでいる人は抵抗があるのでは、と思うほど雰囲気に差があります。

個人的にこの軽快さは李徴とその息子の差をはっきりさせるという点でアリ。詳しい感想はネタバレも含むので後々。

2冊目はパスティーシュを読んだら原典も!というわけで「山月記・李陵ほか」。

書影はありません

2003年に教育出版から出たものをチョイス。山月記、牛人、名人伝、弟子、李陵、「環礁」より寂しい島、真昼の7編が収録されています。

少し話がそれますが、私が山月記を教わった現国の先生は中島敦のファンでした。

普段は落ち着いていた先生が「臆病な自尊心」「尊大な羞恥心」と大きく板書しながらチョークをバキバキ折りまくるのを見て、中島敦のファンは濃い……と思ったことを覚えています。先生元気かな。

話を戻して。表題作も好きですが牛人も好きです。

綿密に計画されているにも関わらず、いっさいの理由も感情も見えない悪意にさらされる主人公・叔孫豹。

知らぬ間に輪の内側に追い込まれ、じりじりと迫ってくる名前の無い悪意。その存在に気づく頃には……。

ホラーのような不条理のような。それでいて目を逸らすことが出来ない話でした。

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