「密告はうたう」感想

伊兼源太郎さんの「密告はうたう」を読みました。

密告はうたうの書影

警視庁人事一課監察係は警察職員の不正を取り締まる。

警察の警察──。監察にあたる係員そのものを敬遠、疎んじる者も少なくない。

捜査の中で部下を失い、捜査一課から監察係に異動になった佐良は「免許証データを売っている」という告発文に基づき、監察を命ぜられる。

対象は、かつて捜査を共にし、失った部下の婚約者でもあった皆口菜子。

件の捜査の分かれ目も情報漏洩だった。やはりあの事件も……?

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硬質で乾いた、けれど熱のある警察小説。

現在の免許証データ漏洩疑惑、佐良と皆口が共に捜査をした未解決事件、佐良の部下・斎藤が殉職した事件、と3つの事件が絡まりながら進行。

捜査は遅々として進まず、ひたすら行確(行動確認≒尾行)のシーンが続きます。

行確、行確、過去の事件を思い出す、行確、人と会う、行確──。

疑問は増えても材料はなかなか増えない。進んでいる実感のなさが、佐良のこれまでを追体験しているようでした。

情報と臆測が人を動かし、それがまた情報となって誰かを動かす。各人の意志と足跡が交錯する様が面白かったです。

何かを信じる、疑う。自分の立ち位置を固定するのは楽。選択したらそのように行動すればいい。けれど、それでは見えないものがある。

盲信しない。放り出さない。境目に留まり続けた佐良だからこそ気づけた糸口、至った結末に唸りました。

続編「ブラックリスト 警視庁監察ファイル」では、佐良の心情や立場にだいぶ変化がありそう。楽しみです。

追記はドラマ化に関して。虫(コオロギ)の話なので苦手な方はご注意下さい。

作中、情景描写で良い仕事をしているコオロギ。

登場が盛夏と年の瀬で、発生時期としてはギリギリなのがまた良い。先走った斎藤と残された佐良、皆口と重なるようで。

ドラマ化すると聞き、はじめに考えたのが「話のテンポ大丈夫?」と「タレントコオロギっているのか?」でした。

はい、ここでひと鳴き\コロコロリー/みたいな。専門の訓練士がいたり。

音効で一発ですか。ですよね。

望みをかけて「コオロギ タレント」で検索したら食虫芸人しか出てこなくてつらい。せめて飼って……。

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