エンプティー・チェア
ジェフリー・ディーヴァー著「エンプティー・チェア」上下巻を読みました。
イエローは蜜を求む本能。ブラックは刻まれた秩序。
最先端の手術を受けるため、ノースカロライナへとやってきたライムたちは居合わせた保安官に捜査協力を求められる。
ひとりを撲殺、2人を誘拐し逃走する少年は、この辺りでは札付きの昆虫マニアだというが……。
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四肢麻痺の科学捜査専門家リンカーン・ライムシリーズ3作目。
慣れ親しんだマンハッタンを離れ、機材や人手、データも不十分な中での捜査を強いられるライムたち。
田舎ならではの疎外感や閉塞感、どこから現れるか分からない虫の恐怖など、前2作とは異なる壁が立ちはだかります。
上巻から下巻への怒濤の引きと、ラストに向けて息もつかせぬ展開は相変わらず。
Amazonのあらすじ紹介が思いきりネタバレをかましているので、文庫版の下巻や単行本を検索される場合はご注意下さい。ひどいやAmazon。
ライムとサックスの関係は前作から半歩進展。
踏み込んだからこそ生まれる葛藤。相手を思う気持ちと欲、黒い感情とどう折り合っていくのか。2人のこれからにも注目です。
ネタバレを含む感想は追記より。
読み終えて、前半の「集団の利」を求めて捜査を進めるさまが薄気味悪く思えてきました。
ハチや蟻のような「無私」の統率があるように見せかけて、その中身は欲と保身と欺瞞。
昆虫と人、集団と個の対比や舞台設定も重なり、ある種パニックホラーのような顔の見えない怖さがありました。
ベンが心強い味方になっていく過程とルーシーのタヴェットへの啖呵が好き。この2人はまた出るといいなあ。
ちょっと残念だったのが、ジェシーの罪が明らかになったからといってサックスの罪が消えるのか?という点。
確かに陪審員は味方につくかもしれないけれど、結果オーライ放免!は都合が良すぎる気がしました。現地の感覚だとまた違うのかな。
そういえば、今作では名前のみの登場でしたがロンのパートナーにベルが就いたんですね。
ジェシーの愛想の良さにジェリーを思い出して意味もなくへこみました。名前も似てるなこの2人。
次は石の猿。今作を経てライムの捜査がどう変わるのかも気になります。
このシリーズは他巻の感想も書いています。
\Thanks for reading!/