猫の手、貸します/化け猫、まかり通る

少し前のことになりますが、かたやま和華さんの「猫の手屋繁盛記」シリーズ既刊2冊を読みました。

猫の手、貸します

人の背丈で小袖に袴、腰に大刀と脇差しを提げ二本足で歩く……猫。

ある晩を境にそんな姿に身をやつすことになった宗太郎は元の姿に戻るため、よろず請け合い人(?)「猫の手屋」として世のため人のために奔走する。

書影はありません

収録作

  1. 迷子地蔵
  2. 鳴かぬ蛍
  3. 思案橋から

感想

人の死なないお江戸コージー猫ミステリ。事件そのものよりも関わる人びとの機微を味わう物語、という印象です。

アレな姿の宗太郎を受け入れるおおらかな世界観とそれぞれの抱える事情が相まって、表に出ない優しさや思いがじんわり胸にしみます。

持ちつもたれつって良い言葉だな、とつくづく。

三日月長屋の面々から猫太郎さん、猫先生と呼ばれるたびに「いや、それがしは猫ではなく」と四角四面に訂正するやりとりも楽しい。

「思案橋から」の最後がなんとなく尻すぼみに終わってしまったのがちょっと残念。夏の夜の暗がりに耳をすます「鳴かぬ蛍」が特に好き。

化け猫、まかり通る

書影はありません

収録作

  1. 猫のうわまい
  2. 老骨と犬
  3. 晩夏

感想

話の筋も宗太郎の身の上もだいぶ猫寄りになった気がする2作目。

相変わらず業の深い身ではありますが世のため人のため猫のため、肉球ぷにぷに駆け回っています。

捕り物や果たし合いなど緊迫した場面のはずなのに、宗太郎が絡むと急に場の空気がゆるむのが楽しい。

今の姿になり、三日月長屋にいるからこそ見えるものがある。堅物武士だった宗太郎も人や犬猫と関わりながら少しずつ視野を広げているようです。

善行とは恩送り。返すのではなくよそに送る。恩がめぐれば浮き世に情けの風も吹こう。この考え方が好き。千代紙の仁義もしびれる。

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明日発売の新刊サブタイトルは「大あくびして、猫の恋」。

今まで爺との話の中に出てくるのみだった宗太郎の許婚となにやらひと騒動ある模様。楽しみです。

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