柳屋商店開店中
柳広司さんの「柳屋商店開店中」を読みました。
- バスカヴィルの犬
- 鼻
- シガレット・コード
- 策士二人
- 蚕食
- 竹取物語
- 走れメロス
- すーぱー・すたじあむ
- 月光伝
- 自作紹介
- おすすめ
- あとがき
- こんなことも
- 柳広司を創った「13」
感想
雑誌初出のエッセイや既刊のあとがきに単行本未収録の短編を加えた詰め合わせ本。
エッセイ部はハードボイルド小説や中島敦、シートン動物記など「やっぱり」と頷く話はもちろん、落語、家族を巻き込んだ職業病の話、執筆のお供は紅茶とチョコなど意外な話まで盛りだくさん。
9本収録の短編はパスティーシュ、中国歴史物、ジュブナイルにファンタジー?とジャンルは様々。走れメロス、シガレット・コード、策士二人が特に好き。
「走れメロス」はその名の通り、太宰治の同題を材にとった柳さんらしさ全開のパスティーシュ。
やー笑った笑った。出だしから「王ディオニスは激怒した」ですもん。お前かい!
セリヌンティウス、山賊、フイロストラトス……原作と同じメンツが同じ台詞を喋ってるのにもかかわらず笑いっぱなしでした。頼むよメロス……。
「シガレット・コード」はD機関シリーズ「誤算」の前日譚で、JTのサイトで公開されていたもの。今回手軽に読めるようになって嬉しい。
物語とは別に仕掛けがひとつ。ある人物の意外な役割が明らかになります。おじいちゃんじゃ駄目なんだよなぁ。
「策士二人」は中国戦国時代の将、孫ピンとホウ涓の物語。大筋は史実通りですが細部をフィクションとして練り、2人の因縁に的を絞って読みやすくした印象。
柳さんの書く人物たちは表情、特に笑い方にその人らしさが出る気がします。
キジマのにやにや笑い、機関員たちの口の端に浮かぶ笑み、子どものような笑顔もダーウィン、ニシノ、ロスアラモスの科学者たちで三者三様。そして今作の孫ピン。
新しく小説現代で始まった歴史物「風神雷神」ではどんな人物が書かれるのか楽しみです。単行本化が待ち遠しい!
\Thanks for reading!/


