殺し屋、やってます。

石持浅海さんの「殺し屋、やってます。」を読みました。

殺し屋、やってます。の書影

職業・経営コンサルタント。副業・殺し屋。

仕事は堅実、明朗会計。受注も不備なく何の支障もない。ただ、標的の行動がどうも引っかかる。

夜な夜な公園で水筒の中身を捨てる女性、独り身にもかかわらず紙おむつを買う男性……彼らはいったい何をやっているんだろう?

収録作

  1. 黒い水筒の女
  2. 紙おむつを買う男
  3. 同伴者
  4. 優柔不断な依頼人
  5. 吸血鬼が狙っている
  6. 標的はどっち?
  7. 狙われた殺し屋
感想

殺し屋が語り手だけどメインはあくまで日常の謎、というコンセプトが面白い短編集。

非日常の立場から一般人の日常をのぞき見ているはずなのに、まるでこちら側が正常であるかのような錯覚にとらわれてしまうのが楽しい。

主人公・富澤も彼の仕事を知る人たちも一見とても普通。だからこそ、変。

特に好きなのは「優柔不断な依頼人」と最終話。立ち位置としては番外編?の「同伴者」も好き。

石持さんの持ち味「隙の無い説得力を持った本来あり得ないシチュエーション」を存分に味わえる1冊でした。

シリーズ開幕とあるので続編も決まっているのでしょうか。楽しみです。

ネタバレを含む感想は追記より。

謎が解かれ日常と非日常の境に再び線が引かれる瞬間、ふっと垣間見える富澤の異質さにゾクゾクします。

倫理観は持っているけど装備していないというか、自らの掲げるルールに反しない限りどんなラインもひょいっと越えていきそう。

そういえば、依頼人と富澤の間に2人挟む受注システムは塚原と伊勢殿の2人で考えたもの。けれど富澤は塚原の発案だと思っているんですね。

ということは、この仕事のそもそもの始まりはもしかして……?と考え始めたら作中では比較的まともに見えていた塚原もすごく異様な人物に思えてきました。

もうみんな怖い。だけどそこが良い。これだからフィクション読みはやめられません。

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